3)光学設計ソフトとの関わり Oct.05 ’25
半世紀ほど前は日本を代表する光学メーカは自社で光学設計ソフトを開発し、使用していました(我々のような機動力の無いところは1)項で紹介したOptasが主流)
そうこうしている間に、精度が高く高速で動作するCODEVが出現し、次第に大手光学メーカもCODEVを採用する流れになってきました
前職ではBlueRayなど高NAのレンズ開発が多く、CODEV以外のソフトでは解が収束し辛かったこともあって、また極めつけはUSのドットコムバブルの影響で通信光学系の開発が多く、斜めカットのSMF(シングルモードファイバー)への入射効率を適切に求める必要があり、この点でもCODEVが優れていました
このような経緯で、前職ではCODEVを光学設計用途として長年使用してきました
また光ファイバー関連(照明光学系)の作業も多く、照明解析ソフトと言えばLight Toolsですが、少々維持費が高く解析時間より経費優先みたいなところでZemaxの照明解析機能を使用していました
当時の比較として、解析の精度はLight ToolsとZemaxのではあまり変わりませんでした(条件によるところも大きいと思いますが)
光学設計上、最後に残る「最大課題」はどのようでしょうか?
個人的には非球面レンズを多用する光学系がメインでしたので、色消しが最大の課題でした
色消しは波長に対するコンストレインツの重み付けの最適化にもよるのですが、ソフト自体の特徴も顕著です
個人的に、カメラレンズなどの設計(硝材選定)ではOpTaliXを多用してきました(理由については後ほどUPしたいと思います)
~~以上、個人的なところの「光学設計ソフトとの関わり」です~~
以下、光学設計ソフトに関わる四方山話として、
① 東海大学で教鞭を取られたK教授、光学系の最適化理論の大御所です(書籍_光学の原理、レンズ光学:理論と実用プログラム)
JOEMのセミナーではたびたびお世話になり、最前列で先生のセミナーを拝聴させていただきました
先生曰く、日本の光学設計技術が海外勢に負けたらアカン、みたいな感じで、凄く心意気を感じた次第です
先生の開発なさっていた光学設計ソフトはToles、収差をコンストレインツにするタイプのものです
当時、光学設計の右も左も分からない自分にとって、とても参考になった光学設計ソフトです
② 当時、セルフォーンと言えばApple, Samsung
Samsungの光学系の開発を手掛けていたのが韓国D社のK先生
前職ではK先生が運営される会社から色々とお仕事を頂いていて、雑談程度に伺うと、K先生が来日される目的の一つはK社の社長さんと光学設計ソフトのお話しされることでした
K先生の話だとその会社は板橋にあって、独自に光学設計ソフトを開発なさっていたようでした
なるほど、光学設計ソフトもいろいろな特徴があり、目的に応じ色々な必要性があるのだなーと感じた次第です
③ 光学メーカベスト5と言えばドイツのS社、L社、国内のC社、N社、F社でしょうか?
ドイツのL社から設計込みの開発依頼を受けたことがあります
L社とのやり取りはCODEVデータでのやり取りでした
L社はCODEVのマクロ機能を使用して、様々な評価ソフトを開発し使用していました
もちろんそのL社は自社開発の光学設計ソフトを所有し、ただ対外的なところではCODEVを使用しています
※ 今月もサボらずUPできて嬉しいですが、ただ光学関連以外の作業が多く技術資料の作成も滞りがちです
多くの方にこの「四方山話」を閲覧頂いているのですが、多少とも光学業界の発展のために・・・頑張れたら、嬉しいと思います
2)大御所との出会い Sep.06 ’25
(前置きが長いのですが)
日本の医療機器の貿易赤字額をご存じでしょうか? 2025年度はおそらく年2兆円を超える額だと思います
CT、MRI、手術用ロボットやペースメーカ、人工関節など多くの機器・治療器具を輸入に依存しています
最近は低侵襲な術式が主流で、特に軟性内視鏡による診断や治療、腹腔鏡手術、ロボットによる悪性箇所の切除等々が多く使用されています
国内メーカO社が提供する軟性内視鏡は世界市場の7割程度と他国メーカを圧倒していますが、腹腔鏡手術に使用する硬性鏡はドイツのK社、USのS社が高シェアーを持っています(記憶違いかもしれませんが、軟性鏡と硬性鏡の市場規模は1桁程度の差があります)
硬性鏡(膀胱鏡)を国内で初めて輸入販売を手掛けたメーカがT社で、その後T社は国産化に成功しています
その製品開発を手掛けたのが光学業界第一人者のN氏(著書_レンズ設計工学・・・)でした
医療機器の光学系の開発が長かったこともあってか、T社からN氏の設計した硬性鏡の改良依頼を受けたことがあります
N氏の設計を光学ソフトに落とし込んで鑑みたところ、斬新なそして緻密な一面とそれと組立時の誤差解析において非常にバランスが取れた設計で、現在のように光学設計ツールの発達していない時代になぜこのような設計ができたのか、と感心しきりでした
先月記載しましたC社M氏の「光学設計には自由度があって、その自由度の範囲での最大限のパフォーマンスとは?」みたいな問いに対し、最近は光学設計ソフトに依存する部分が多くオペレーションスピード、結果の記憶と性能トレンドの把握などが光学設計スキルのランク付けみたいなところがありますが、もう一つ光学的な理論みたいなところも必要と思った次第でした
1)光学設計との関わり Aug. 07 ’25
現在では年3兆円ほどを売り上げるメーカさんの光学設計部長だったD氏から、近軸光線追跡や像品質の評価などをご教授頂いたのが光学設計との関わりです
近軸理論などの話は退屈だったのですが、四方山話を伺うのが楽しみでした
当時はNECのPC98などのパソコンが身近でしたが、それ以前は対数表と電卓などが計算の手段みたいな・・・
そして、その計算を担当する部署内に多くの女性がいらっしゃったようで、結婚できない光学設計者はいなかった・・・らしいです
D氏の上司の方、K氏は著書光学入門を出版されていてPC用のOptasと言う光学設計ソフトを開発された方です
D氏お勧めの著書はその光学入門とC社M氏のレンズ設計法でしたが、今でもバイブルとして愛用してます
(C社M氏のレンズ設計法ですが「光学設計には自由度があって、その自由度の範囲での最大限のパフォーマンスとは?」みたいな問があって、なるほどと思いつつも難しすぎ(もう少しかみ砕いて頂くと、と当時も今も思っています)
0)「四方山話」を掲載します July 08 ’25
光学製品の開発は多元的で、取り合えず試してみて、得られた事象を検証してと言ったプロセスの繰り返しです
このような経験の積み重ねが技術力の向上に繋がるのですが、結構と時間と労力が必要です
個人的に長い間、多種多様な光学製品の開発に携わってきました
納期や予算の兼ね合いで一発勝負的な開発スタイルでしたが、失敗談もかなり
リスクを取らなければ前に進めないし、課題が発生してお客様にご迷惑を掛けることは最低限避けたい、と言ったところで光学製品の開発は大変です
個人的な経験談が皆様のお役に立つか分かりませんが、
光学製品の開発をされている方のリスクの低減や一コマのBreak timeになればと思い「四方山話」を掲載します
月毎に更新できればと思っています