e) F値


F値について

まず F値とは?
F値は光学系の明るさを示す値 [F No.]・[ F/ # ] などと記載されます
レンズメーカによっては[口径比]で記載する例もあります

下図はF値を示す概要図です(カメラレンズは複数枚のレンズ(屈折面)で構成されますが、これを一つの屈折面で定義できます)
F値は光軸と光線束外側の光線が織りなす角度[u’]とすると
  F値= 1/ (2・sin(u’))

F値が大きい(u’の値が小さい)と
  sin(u’)≒ tan(u’)
と近似できるので、焦点距離を光束径(φD)で割った値がF値
また口径比も同じで、光束径に対する焦点距離の比で例えばF値2.8の場合は口径比[1: 2.8]

F値は下記の項目に影響
 ・明るさ
 ・解像力
 ・被写界深度
 ・ボケ量

F値と明るさ

下図はF値5.6(青色の箇所)とF値2.8(黄色の箇所)の光線束を示し、光軸と各光線束の外側の光線の角度比は約1:2
明るさは光線束の断面積なので、上記角度比の2乗で変化
※ F値が2.8→5.6になると明るさはその逆数の2乗の[1/ 4]

F値と解像力

一般的なフルサイズカメラ2400万画素センサーのセルのサイズは6μm、このナイキスト周波数(MTF値)は83 LP/ mm
この空間周波数における解像力(Modulation)とF値の関係を下図に(青ライン右横の数字は一般的なカメラでのF値)

F値が大きくなると解像力(Modulation)は低下(ほぼ線形で変化)
これは回折の影響で、F値が大きくなるに従い回折径が大きくなります

F値と被写界深度

「F値が大きくなると被写界深度が深くなる」
下左図はF50 mmのレンズとF25 mmレンズにおいて物体距離が変化した時の焦点距離の変化を
※ 横軸が物体距離、縦軸が焦点距離の変化量(Focus Shift)
  青のライン右横の数字はシミュレート時の物体距離(m)

==シュミレート条件==
・レンズの収差_無し(無収差レンズ)
・レンズ   _焦点距離F25 mm、F50 mm
・物体距離  _近端: 3m, 遠端: ∞

上左図のレンズ焦点距離F50 mmのレンズとF25 mmレンズの焦点距離シフトについて、F50 mmレンズの場合、物体距離が3 mから∞にシフトした時、焦点位置はレンジで0.8 mm以上シフトします
これに対しF25 mmレンズの場合は約0.2 mmです

被写界深度はレンズ焦点距離と逆比例の2乗の関係で、F25 mmのレンズとF50 mmレンズを比較すると、焦点距離比[1: 2]に対し被写界深度は[4: 1]になります
これは光学的に言う横倍率と縦倍率の関係です
※ 横倍率_物体に対する像の大きさの比(光軸と垂直方向の倍率)
  縦倍率_物体の長さに対する像の長さの比(光軸方向の倍率)

上右図は撮像素子のセルサイズ6 μmのナイキスト周波数 MTF 83 LP/ mmにおいて、F値とディフォーカス量における解像力(Modulation)を示した表です。
近端3 mから遠端∞までを撮影しようとした場合、F25 mmのレンズのディフォーカス量は±0.1 mmなので、F値8~10に設定すると、解像力30%以上の撮影ができます

これに対しF 50 mmのレンズの場合はディフォーカス量は±0.4 mmなので、F値13程度が最適値になります
(F値13まで絞るとメリハリの無い画像になります)

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