❍ PLフィルターの機能
PLフィルター(Polarized Light Filter)は誘電体(電気を通し難い材料)表面の反射をカットする目的で使用します
※ 誘電体_水・油・プラスチック・ガラス、コンクリートなど
※ 金属の反射光は遮光できません(誘電率が低い物質の場合、反射光は同位相にならないので)
PLフィルターの応用として、
・反射光を軽減し媒質内部を撮影
・物体の色合いを(できるだけ)忠実に
・青空をより青く
下写真において、
左側はPLフィルター無し、右側はPLフィルター有り
左側写真では反射光の影響で水中が見えませんが、右側写真では水中が観察できます
それと、左側の写真ではトンボの色合いがはっきりしてます
PLフィルターを使用することで反射光を軽減しグレア(Glare;目障りな光)の軽減ができます

❍ 反射光について
光は進行方向に垂直な方向に振動する横波です
振動方向が不揃いな光を非偏光(自然光)、振動方向が一定な光を偏光と呼びます
レーザなどの指向性の高い光源からの光以外は非偏光です
非偏光は透明な媒質表面で反射すると振動方向が一定な偏光になります
下左図において、
媒質の点Pに非偏光が入射した状態を示します
入射点Pに法線(媒質面に垂直な線)を立て、この法線と入射光線がおりなす平面が入射面
媒質界面で反射した光は入射面に平行なp波と入射面に垂直なs波に分かれます
※ p偏光(Parallel(平行) Polarization)、s偏光(Senkrecht(垂直) Polarization)
下右図は屈折率n= 2のガラス表面での反射率を示します
s偏光は入射角が大きくなると反射率が大きくなりますが、p偏光は入射角約60°近傍で反射率がゼロになります(この角度をブリュースター角と呼びます)


PLフィルターは、偏光した光をカットします ただp偏光もしくはs偏光のどちらかです
一般的にはs偏光の割合が大きいので、PLフィルターのグリッドを横向きにして使用します
それと、反射角60°近辺にするとp偏光がゼロになるのでこの近傍角での撮影は無反射で撮影できます
❍ PLフィルターの種類
構造の違いによってL-PLフィルターとC-PLフィルターの2種類があります
L(Linear)-PLフィルターは直線偏光板(Grid Wire Type)と呼ばれ、樹脂にヨウ素化合物等を練り込んで引き延ばしたもの(他にも種類があります)
C(Circular)-PLフィルターは上記の直線偏光板に1/4λ波長板を張り合わせた構造で、透過光が円偏光
※ カメラのハーフミラータイプのオートフォーカス機能に偏光板を使用した製品があり、直線偏光はその性能に影響するようです
このため、カメラに装着するPLフィルターはC-PLフィルターを利用するのが一般的です
❍ PLフィルターを使用するとなぜ青空がより青く撮影できるのか?
大気の分子(N2, O2…)は光の電場の影響で分極し、光の電場の振幅の影響で光を散乱します その散乱の度合いは波長の4乗に比例して大きく、波長の短い光(青色)ほど多く散乱し青空になります
この現象を輻射と呼びますが、この輻射光は偏光です
日本は四方海に囲まれていて大気中の水蒸気量が多く、大気中には極微小な水滴が多く含まれます
この水滴での反射光は光源とみなせ、青空+反射光で明るくシアン色な空色になります
PLフィルターを使用すると輻射光と反射光を軽減できるのでより青空を青く撮影できます
❍ 留意点
① PLフィルターはs偏光かp偏光のどちらかしか遮光できない
② PLフィルターを装着すると明るさは約1/3に減少
③ PLフィルターは太陽などの点光源とみなせる場合に効果が高く、発光面積の大きな照明下では効果が低くなる
④ 偏光角は光源(太陽)との位置関係で変化する
⑤ 金属などの誘電率の低い材質での反射は非偏光で、PLフィルターは機能しない